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H4拮抗薬、活性と作用様式の種差を克服する研究戦略

Mowbray CE, Bell AS, Clarke NP, et al. Challenges of drug discovery in novel target space . The Discovery and Evaluation of PF-3893787 : A Novel Histamine H4 Receptor Antagonist. BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS. 2011.
Available at: http://dx.doi.org/10.1016/j.bmcl.2011.07.125


ファイザーの研究者は、H4拮抗薬開発化合物PF-3893787を創生するプロセスを通じて、彼らが学んだ事、そして新規でバリデーションされていないターゲット探索するにおいて重要な幾つかのレッスンを示してくれている。キー・プロセスとして
・複数の化合物で初期毒性試験を行い結論を得る
・動物種毎の活性と薬効を理解し、安全性試験のためベストの動物種を選定
・ケモタイプを変える事で種差を克服。ここでは毒性がクラスエフェクトか化合物由来かを見極める事が可能となった。
・バイオマーカーは臨床と非臨床のMOAをつなぐ強力なツールとなる。

があげられる。これも含め、その研究展開は、ベンチマークの差別化点を明確化、トキシコフォアのインドールに着眼して狙い撃ち変換、セレンディピティでチャンスを拡大、速攻で毒性試験、毒性がクラスエフェクトか化合物由来かの見極めに新規ケモタイプ創出、LE指標に低分子化、ケモタイプの融合、敢えて活性のない化合物でクラスエフェクトを見極めるといった、学ぶべき点が多々含まれた内容である。

H4拮抗薬としてJ&Jから報告されたJNJ-7777120を再合成してプロファイリングしたところ、強力な活性と選択性を有していたが、ラットでPKと毒性の問題がある事が判明した。代謝安定性は不十分であり、また電子リッチなインドールはバイオアクティベーションによる毒性の引き金になると推定された。まず物性改善の為に、ピペラジンアミドを等価体として縮合ピロリジン1に変換した。これにより代謝安定性は改善した。しかし、グルタチオントラップ実験で活性代謝物が確認された。やはり、電子リッチなインドールが懸念材料と考えて、より極性の高いフルオロベンズイミダゾール2をデザインした。代謝安定性に大きな改善はないが、狙い通りバイオアクティベーションを回避した。さらにフッ素を一つ入れた3で活性は10 nMに向上した。ところが、この化合物を再合成したところ、活性は128 nMと減弱した。各種スペクトルを精査すると、合成時に不完全な加水分解体がアミジン4となっている為と判明した。Scheme 2に従って別途この副生物のアミジン4を合成して評価したところ、このアミジンこそ活性は10 nMであり、アミド3より12倍強力な活性を示した。このセレンディピティによって2系統のツールを見出す事に成功した(Table 1)。しかし、これらの4日毒性試験で、用量依存的に脾臓、胸腺、消化管のリンパ細胞でリンパ減耗、網状赤血球数の低下、赤血球産生低下といった重篤な副作用を示した為に、開発を諦めざるを得なかった。両方の化合物は、ラットでの炎症応答性を誘起して毒性につながっている。毒性解析では、H4拮抗薬の過剰のフリー体が毒性の原因となっている事を確認した。骨髄で生成する血液細胞は、H4Rが過剰発現している事はファイザーの研究者達も知っていた。ここで、毒性はH4拮抗作用由来のものなのか、化合物構造由来のものなのか、という疑問が生じた。この問いに答えを出す為に、全く構造の異なるケモタイプをHTSから見出し、毒性がMOA由来なのか、別の要因なのかを見極める事にした。

ヒットで見出したLE0.29の化合物5の周辺置換基を探索し、LE0.4に改善した6を見出し、一方で右側フラン側鎖を除去した7ではLE0.45の502 nMの活性を示した(Scheme 3)。これらをハイブリッドした8でLEは0.48、活性も8乗オーダーに入り、さらに側鎖を最適化した化合物9ではLE0.63、結合活性、細胞系活性で9乗以上の強力な作用を示した。クリアランスは大きいものの経口吸収性は十分でヒトでの予測経口吸収性は30%、15 mg QDの薬効量と想定した(Fig. 2)。次に毒性がMOA由来か構造由来かを見極める為、類似化合物で3つの活性のある9-11、1つの活性のない12を毒性評価した。これら4化合物は全て十分高い血中濃度を示し、化合物11では骨髄細胞毒性がトップドーズで確認されたが、9,10は免疫反応のような顕著な毒性初見は認められなかった。よって、ベンズイミダゾールで認められた毒性は、H4拮抗薬MOA由来ではないと判断された。一方、H4Rの活性のない12では、高容量で死亡が認められた。また、9でもトップドーズで空胞形成が認められたが、おそらく2塩基性構造に由来すると考えている。

H4受容体拮抗薬のMOA由来の毒性でない事が確認できたので、さらに最適化を続行し、脂溶性を低下、LEを0.62まで高めた化合物13(PF-3893787)を得た。代謝経路は肝と腎の両方を経由し、経口吸収性は改善、ヒトでは長時間持続型の37-40時間の半減期と予測された(Fig. 30。H4はバイオマーカーに好酸球が利用可能で、ビトロのアッセイではJNJ-777120より優れていた(Table 3)。

最後に、H4リガンドの最大の課題、種差の克服が課題となった。GPCRのリガンド結合サイトは動物種で大きく異なる。この事は、結合活性のみならず、GPCRの作用様式、たとえばJNJ-777120では、ヒトではアンタゴニストだが、サル、イヌ、モルモット、ラットではアゴニスト、マウスではパーシャル・アゴニストと全く異なる。一方で、選択した化合物13はヒト、サル、イヌでインバース・アゴニストかアンタゴニスト、げっ歯類でもパーシャル・アゴニストで、いづれも拮抗薬の範疇とみなす事ができる。最初にJ&Jからホッピングしたベンズイミダゾール系化合物は、ラットではJNJ-777120同様の作用様式:アゴニストであった。よって、炎症応答性の毒性は化合物がラットでアゴニスト作用を示したからと考えられる。拮抗活性であれば、本来、抗炎症作用を示すはずである。種差の課題を克服した化合物13( PF-3893787)は、ビボでも薬効を示し、開発化合物に選定した。

H4拮抗薬では、開発化合物を見つけ出すまでに、(1)バイオマーカーの同定と、それを使った実験系の確立、(2)非臨床からヒト臨床への外挿、(3)種差によるMOA変化の克服による毒性回避、がポイントになった。とりわけ、下記に列記した、有用な戦略上のポイント、ナレッジ、アイデア、ブレイクスルーが含まれており、学ぶべき点は多方面に渡る。


1)ベンチマークとなる他社品のプロファイリング、差別化点の明確化
2)ピペラジン等価体として縮合ピロリジンで代謝安定性が改善
3)バイオアクティベーションがトキシコフォアのインドールであると推定して脱却し、狙い撃ちで課題解決
4)副生成物に強力な活性がある事を見落とさずに拾い上げたセレンディピティによって、プロファイルの異なる2系統の化合物を入手。
5)毒性がMOA由来か化合物由来かを見極める為に複数ケモタイプを準備。
6)毒性要因を見極める為に、マイナーチェンジで活性の消失する化合物を検証
7)バイオマーカーの選定
8)ドラッグデザインとしてLEを指標とした低分子化、ハイブリッドによるドラッグライクネス向上
9)H4では作用様式(アゴニスト・アンタゴニスト・インバースアゴニスト・パーシャルアゴニスト)が種差によって異なるという非常に珍しい性質を持つ。この課題を克服し、初期化合物の毒性はラットでのアゴニスト作用である事を明らかにした。
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