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ヒト代謝物予測、リリーの実例

Anderson S, Luffer-Atlas D, Knadler MP. Predicting circulating human metabolites: how good are we? Chemical research in toxicology. 2009;22(2):243–56.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19138063


FDAは化合物原体よりも10%以上のレベルで存在する代謝物についての安全性試験のガイダンスを発表している。そこでFDAは早い開発段階からヒトで血中に存在する代謝物に関して試験する事を要求している。この報告では、リリーのポートフォリオの1993年から2008年まででC14ラベル体を用いたヒトのADME試験が完了している17化合物を題材に、インビトロとヒトでのラベル体の結果で、どの程度相関があって、インビトロ代謝試験が予測に有効かを報告している。その結果、12化合物(全体の41%)はインビトロから正確にインビボの結果を予測する事ができた。ケース1のLY01はシアニドの脱離に伴うSCNの生成、ベンジルのヒドロキシル化が予測され、ヒトでの実際の血中動態を良く相関するものであった(ヒドロキシル体の安全性試験が完了する前に開発は中止)。ケース2のLY02はフェーズ2化合物で、ケトンのヒドロキシルへの還元とピリジンNのグルクロン酸包合が示された。ケース3はフェーズ2に開発が進んだLY03の例でCYP2D6多型によるフェノールの酸化、続くグルクロン酸包合が生じ、ビトロの予測がよく機能したケースとして示された。一方で、6化合物(全体の35%)はインビトロが過小予測するものであった。ケース4の化合物LY04はヒトで包合体が代謝物として検出され、これらはインビトロ試験、動物モデルのビボ試験で予測できるものではなく、ヒトの血中動態を調べるまで見抜けないものであった。リリーはFDAからこの代謝物の試験を行うように要求された。ケース5のフェーズ2に進んだ化合物LY05は溶解度も良くヒト肝ミクロソーム、肝細胞、肝臓薄片を使った試験、ヒトに15 mg / kg経口投与で2時間、8時間後でも検出されなかった4つの代謝物がヒトに投与後12時間後には現れ、フェーズ2終了段階までにFDAから要求された安全性試験を行う為に大幅な時間、費用面でのリスクが生じた。ケース6のフェーズ3に進行したLY06は代謝安定性に優れ、ヒドロキシル体がそれほど多くない量で検出されるのみであったが、ヒトでの動態の実際は、アミド加水分解体やベンジル位ヒドロキシル体など11種類の代謝物が検出された。このケースではビトロでは主代謝物もマイナーな複数の代謝物も見抜けなかった事になる。しかしながら、こういった状況は、プレクリニカルでは非ラベル体を使って試験をしているのに対して、臨床ではラベル体を使った試験に切り替えている点で生じるコンフリクトとして生じているのかもしれない。逆に、残りの4化合物(全体の24%)はインビトロ試験が過大予測する結果となった。この主たる要因は第2相包合による代謝、非P450系代謝を受ける場合に見受けられる。ケース7のフェーズ2開発化合物LY07はNがグルクロン酸包合した化合物が主代謝物であった。FDAのガイドラインでは、水溶性が高く薬理的に不活性な代謝物は、アシルグルクロン酸包合体のような例外を除いては、毒性試験はしなくてよい、となっている事から、安全性試験は実施されなかった。LY08は窒素原子が包合されるケース、LY09はカルボン酸系のケースである。特殊な例として化合物LY10, 11は非常に低い濃度で存在する化合物原体とその代謝物が問題となったケースがある。ここではグルクロン酸包合が主代謝物となるが、ラベル化された原体がそもそも1%程度しか存在しない為に、その10%の代謝物となると検出限界になる為に、特定する事自体が困難となった。LY12は化合物原体がおよそ2ヶ月(54日、1296時間)経っても血中に33%残っており、代謝物も同様に血中持続性が異常に長かった。ここで得られた傾向としては、代謝物が複雑になれば、インビボの予測精度も欠き、インビトロ試験はグルクロン酸包合や非CYP代謝を予測するのは困難である事である。インビトロデータは消失過程を予測するのには向いているが、ヒトの血漿中に存在する代謝物が考慮すべきか否かまでの定量性を予測するのは難しい。ここから学べる事は現在のヒト動態予測の精度と限界を知り、それ以上の事は実際にヒトでの動態を調べて確かめる事なのかもしれない。このようなデータは、「動物では出たが、ヒトでは出ないかもしれない、やってみないと分からないから何でも上げておけ」との極端な楽観論に悪用されるかもしれないし、「動物では出なくてもヒトでは出るかもしれない」という臨床開発のリアルな難しさに悩まされるかもしれない。
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