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付加的変換ではなく母核変換が有効。LipEに対してフリー・ウィルソン解析とLOOCV検定で絞込み

Freeman-Cook KD, Amor P, Bader S, et al. Maximizing lipophilic efficiency: the use of Free-Wilson analysis in the design of inhibitors of acetyl-CoA carboxylase. Journal of medicinal chemistry. 2012;55(2):935–42.
Available at: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22148323

ファイザーがACC阻害薬としてHTSから見出したヒット化合物1は、25 nMの活性を持つがlogD 3.8と脂溶性が高く、脂溶性効率はLipE 3.8程度。代謝安定性も低く、溶解度も悪い(Fig. 1)。このようなリードに脂溶性置換基を付与すれば、活性は上がるだろうが、代謝安定性も溶解度も悪化するだろう。逆に末端側鎖に極性基を入れても、活性は減弱し、膜透過性は低下し、経口吸収性は悪化するだろう。 脂溶性は代謝安定性やhERG阻害、溶解度、毒性の増悪につながり、スピロクロマン系統の化合物には、その懸念がつきまとった。この問題を脱却する為に、脂溶性を低減したスピロ環骨格をデザインする事とした。ベンゼン環をピラゾールにした2では、活性は10倍低下するが、脂溶性は2桁低下して、LipE5.4と優れた脂溶性効率を示した(Table 1)。ピラゾールの置換基R1にエチル基をいれた4で活性は8乗、さらにR2にメチル基を入れた5では元のクロマン1に匹敵する28 nMまで活性が回復、logDも2.1に抑えている事からLipE 5.5と優れている。R1はtBu基にした12で活性は7.0 nM、LipEは5.9まで向上した。次に、インダゾール部分を変換し、無置換のインダゾール19では活性こそ100 nMと低いが、LipEでは5.7と保持している事から、ポテンシャルの高い置換基である事が理解出来る(Table 2)。インダゾールのメチル基やNをシャッフルして種々の置換基の可能性を検証し、LipE5以上の置換基を見出した(Table 2)。
 テイルとヘッド部分の各置換基の貢献度をより正確に把握する為に、フリー・ウィルソン解析を利用した(Fig. 2)。フリー・ウィルソン解析とは、1964年にGSKのフリーとウィルソンらが置換基と生物活性の相関を理解する為に、化合物の部分構造の有無に対して1と0の変数を定義し、活性の変化を解析する手法である(参考文献21:Free, S. M. Jr.; Wilson, J. W. A Mathematical Contribution to Structure-Activity Studies. J. Med. Chem. 1964, 7 (4), 395−399.)。ここではエンド・ポイントの達成には、活性ではなく、LipEをフリー・ウィルソン解析の指標にした。この解析では、新規ピラゾール系とクロマン系でのSARに整合性があるので、クロマン系化合物もデータセットに組み込んだ。これによって、948化合物の情報から、160種類のヘッド部分、300種類のテイル部分を抽出し、これらのフラグメントをフリー・ウィルソン解析した。
 次にこの妥当性を検証する為に、データセットから350化合物を抜き出し、LOO (leave-one-out) 評価で検定した(Fig. 3)。本手法は、標本群から1つの事例だけを抜き出してテスト事例とし、残りを訓練事例とし、これを全事例が一回ずつテスト事例となるよう検定を繰り返す効率的アルゴリズムである。3つのデータセットのR2は0.87, 0.92, 0.93でありその妥当性が確認した。
 実際に合成する化合物を決定する為に、まず合成可能な160X300=48000化合物をバーチャルで発生させ、LipEの高い順に優先順位付けし、logD1.7-2.5のレンジでカット・オフして197化合物を選定した。これらを合成し評価した結果、フリー・ウィルソン解析のLipE誤差±0.5範囲内が的中とした場合、83%の164化合物が予測通りと判定された(Fig. 4 青丸)。残り17%の33化合物はLipE誤差±0.5範囲外だが(Fig. 4 黄四角)、そのうちの20化合物はLipE誤差±0.75であり、このスレッショルドでは93%の精度となる。以上より、バーチャル・デザインから合成化合物を選出する際のフリー・ウィルソン解析が精度良く有用である事が示された。
 Table 3の代表6化合物から、R1がtBu基が多いのは初期SARのTable 1からも驚くことではなかった。しかし、テイル部分のSARではベンズイミダゾール25,26で活性が9.6, 10 nMであり、初期SARのTable 2より優れた値であり、予想・実測のLipEは6.0に迫る。ベンズイミダゾールの異性体27ではLipEは予測値の5.7を上回る6.0であり、これまでの合成化合物では60 nM以上の活性は得られなかったが、ここでは13 nMにまで向上した。これらの中でもとりわけ有用なのは、初期SARでは活性面で魅力薄に見えた無置換インダゾール28であり、LipEは6.0、代謝安定性は最も良く、活性は17 nM、溶解度、膜透過性に優れていた。代表化合物28のPKはBA50%で優れ、ED50は肝臓1.6, 大腿四頭筋2.6 mg / kgであった。

 ここでは、

・単に脂溶性や極性基をぶら下げるだけでは活性と物性の両立はできないので母核を変換
・活性に引きずられずに脂溶性効率LipEで置換基を評価
・大規模バーチャル・デザインから化合物選出にフリー・ウィルソン解析を利用
・LOOCV検定で妥当性を予め評価

した事が鍵となって、無駄な合成を省き効率的に優れた化合物を見出し、かつ、目視では見落としがちな置換基をレスキューして、優れた化合物を見出した。
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テーマ : 科学・医療・心理
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